自分の居場所を守るため ディミトリ感想
2024年9月22日。舞空瞳が宝塚大劇場を去った日に捧ぐ。
などと、かっこいいことを言いたいけれど、ずいぶんあたため過ぎていた配信時のメモを掘り起こしてきただけに過ぎない。しかし、彼女のサヨナラショーを見て感化されたからこそ、今に至る。
クラシカルなサヨナラショーだった。こういったショーは久方ぶりに観たかもしれない。夢見心地な演出に心が洗われるようだった。
彼女は特に”オーソドックスな宝塚歌劇”が好きらしいということを耳にして以来、彼女に求められるものと自分が好きなものとにギャップがあるという、これまた一つ「ありふれた現実」なのかもしれないなと勝手に感じながら、彼女が舞台で戦う姿を私なりに見つめてきた。
トップ娘役であり、何より懸命に”自分なりの”相手役であろうとした彼女の心に、ありがとう、お疲れ様でしたと伝えたい。美しい衣装よりももっと眩しい、涙のこぼれんばかりな瞳に目を奪われた時間だった。
ひとまず、宝塚本拠地でのご卒業おめでとうございます。
ここからは当時のメモを掘り起こし作業だ。
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BLUFF 他人の成長を見つめる懐に抱かれて
若い頃から研究科20年といった形容に負けない風間さんに、役がようやく追いついてきたといっても過言ではないと思う。けれど、ご本人からしたら、さまざまな壁があり、乗り越えるために弛まぬ努力をしたことで拓かれた道であるわけで。
だから、安易な形容は使うまいと、ふと思う。
いや待てよ、こんな楽しい作品の感想が妙な苦言から始まるのは我ながらどうかと思う。
が、改めて、風間柚乃さん、東上主演公演おめでとうございます。
素晴らしい劇場で、目の当たりできた奇跡を抱きしめる。
突然だが、NOSで繰り広げられていたポスター撮影秘話、みんなかわいいね!
そして、全ツ琥珀のポスター撮影で月城さんが身体張ってた話がひょうきんだね!(大いなる脱線)
ずっとずっと愛していきたいよ、そりゃあもう。本当は。
さよならと切り出す強さと潔さ 〜月組琥珀色の雨にぬれて感想
何度でも言いたい。
鳳月杏さん、天紫珠李さん。月組トップのご就任、誠におめでとうございます。
私が宝塚作品史上*1、最も心惹かれる作品である『琥珀色の雨にぬれて』が再演されると知った時、正直クロードな月城さんを観たいと思った。同時にそれはルイな鳳月さんを観たいとも思っていたのである。
しかしながら、今回の全国ツアー公演の配信を拝見し、このキャスティングだからこそ功を奏したのだと腹落ちできた。
観る前は作品への思い入れが強い分楽しく観られるのか謎な不安を抱いたし、初日すぐの感想にソワソワしていたことも否定しない。
しかし、誉れ高い地元降臨となった配信の公演では、その不安を吹き飛ばすかのような感覚を得られた。とりわけ、お披露目公演としての多幸感に胸がいっぱいになった。
おめでとうと言える場は、いくつあっても良いものだ。
*1:現時点。更新を待つ
月が満ち、また明日に向かって 〜月城かなとサヨナラショーほか
7月になった。あっという間に今年の半分が終わった。
毎日生きるのに立ち止まっていられないが、漫然と生きていくのは勿体ないと感じる。
そんな忙しなさの中で、心もなかなか落ち着かない。
正直、再開となった宙組の配信を迷いながら目にしたことは、心に突き刺さった棘のように存在を主張している。眩しい舞台、久々の笑顔。ほっとする気持ちもなくはない。でも、それでも。この痛みというか違和感というか、例え言葉にできなかったとしても感じている何かの存在は絶対に忘れてはいけないと頭のどこかで警鐘が鳴る。
あれこれ考えているうちに、月城さんの退団日が迫る。七夕であるその日は、奇しくも東京都の大事な日。政治だろうと趣味だろうと、悲しいほどに私の生活と地続きだ。
私の気持ちを私が殺さない、の決意を胸に書き進める。いつも通り前置き日記が長い。

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歴史を超える歩みを祈って GrandeTAKARAZUKA110!
ショーの感想というのは難しい。
なまじっか知識があるわけでもない観客は、素敵だったなぁと心のなかで呟きながら、気になるところをせわしなく見て、終わる。
こんな贅沢な刹那を言葉にするという強制力は、いっそ持たないほうが楽しめるのではないかと時折思う。でも、いかんせん忘れてしまう。
それは勿体ないので、どうにか言葉を紡ぐ。
だって、特別なショーだから。
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夜明けの光芒に触れて、震える心
星組公演 『夜明けの光芒』 | 宝塚歌劇公式ホームページ (hankyu.co.jp)
主演作に文豪小説を下地にしたオリジナル作品があてがわれる点、つくづく持っている方なんだなぁと演目発表時に思った。サイコロゲームでも抜群の才を発揮していた、暁千星の話。
けれど、正直なところ吉と出るか否かは分からないぞと思ったのが続く心境でもあった。
もちろん脚本の心配はあったけれど、それ以上に彼女自身のこと。個人的には、芝居の月組出身だけれど、持ち味はきっと違うところにもあって。ずっとずっと戦ってこられてきたのが今の彼女だと老婆心というかなんなら祖母のような気持ちで思っているから。
明確に凡人とは一線を画す星の元に生まれた方が、もがく姿が見えたからこそ心惹かれるわけで。大柄で、華があって、よく通る声に磨かれた歌唱力と力強い男役ダンスに、つくづくミュージカル舞台に向いている人だと思う。でも、それだけではないはず。何とかどうにか突き抜けてほしいと、もはや何様だかよく分からないイチファンは、ずっとずっと願い続けているのである。
しかし今回、観終えて思った。
彼女には古典がよく似合う。そんな気づきのような再認識を与えてくれたこの作品に、現在進行系で私はズブズブと足を取られている。
人混みの池袋の果てに、沼があった。

貴重な公演の中で、東京初日ともう一度。共に1階後方センターで観させて頂いた、私の幸運を添えて。
ちなみに、原作は未読。しかし観劇後から読み始める予定で図書館からすでに借りた。楽しみは長続きさせたい。
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