百聞は一見に如かず。しかしながら一見だけでは中々分からない。でも楽しいのは“分かる”。そんな感覚は考察が流行りまくる今の時代に染み渡る。言うなればDon't Think, Just Feelを体現する齋藤吉正ショー。実に爽快!
ベテランの域に達する彼の新作は今回も例に漏れず、噛み続けることでいつの間にか何味か判明してくる気がする正体不明のガムのような作品だった。と言っても、その味わいは劇場に複数回訪れることでやっと輪郭が見えてきたわけだが。そんな私の味わった風味と感想についてつらつらと書いていく。

緞帳だけでざわつかせる流石のセンス。水晶宮殿が水面に映るようにクリスタルパレスと表示されているポスターデザインからして、”映し出された姿”を描きたい・・・のかもしれない。
まず、デビルフリーザってどちら様ですか。とても明瞭な歌声で自己紹介してくださるのはありがたいですがやっぱりちょっとわからない。ムゲンスパイダー(明日海りお@『TAKARAZUKA∞夢幻』)の親戚なのかと目を凝らしたのは私だけではあるまい。髭が取れてすっかり美しいお顔が押し出された風間柚乃をオペラグラスで見ていたら後ろに映像も流れていて、鏡のような動きをしていた。氷、鏡、映し出されるものはーーーーーーーーーーーーー。
とりあえず(好みが伺える)精鋭からなる彼の軍団が去ったらプリンセスとイケメンナイトたち、そしてせりあがるプリンスが現れる。芝居の時とはうって変わって涼しげなアイスブルーの世界。プリンセスの髪の色がクリームソーダ~さくらんぼを添えて~みたいなカラーリングでめちゃくちゃおいしそう(お腹すくね)。ゆめかわすぎてもうここで芝居とのギャップで風邪をひく。氷だけに。退団者の瑠皇りあ&羽音みかがとても良い位置にいる時点で先生の愛を感じる。ただしまだこれは序章に過ぎなかった。
プロローグが終わったら多分ラスボスと思われる大プリンセス(と私が言いたいだけ)組長様梨花ますみが現れる。おそらく最強なんでしょうが、ここで敵を倒したらショーが終わっちゃうので最後まで引っ張っている模様。さあ冒険が始まるんだな? と思ったらいきなり始まるUberEATS・PARU。
ん?
♪噂のふたりのどうする? どうしよう! って~~かわいすぎて、滅! 嘘、もっとやって! やっぱり私は白ぱる(だからそんな名称はない)が好きですよ、あなた。(もう黙って)PARUというワッペンを見て、今私が絶賛ハマっている某アイドル※を思い出してニマニマ。(※デビュー記念日やグループ名を衣装のワッペンにしている方々にも金と時間を差し出し始めており、ピンときた同志の方はぜひご一報を)戻ると、私、乃々れいあのつるつるな頬がとても好き。
♪あなたに恋をしてみました 久々に聞いたな?! ゆめかわプリンセスがトンチキ衣装着て歌うの面白すぎる。着こなせるのは天紫珠李のプロポーション頼みだぞ。この場面のカオス感に既視感ある・・・(参考『Misty Station』『アプローズ・タカラヅカ』)とよくよく見ていたら、彩海せらが霧矢大夢の衣装を着ているね。これね。しかも満面の笑みの彩海せらの着画舞台写真が出ていたことに気づいたのでお迎えしたい。かっこいい羽音みかのオールブラックスタイルは懐かしのKILLER-K(瀬奈じゅん)の相手役な舞城のどか氏のALLBLACK×ショートカット、うーん性癖。加えて気づいたら目に飛び込んできた美海そらに尻尾がついていてもうこれは(ryとなった。ていうかPARU×JURIはかけがえのない同期であるわけで、この二人がひと場面持つってことに泣けてくる。ちなみに今年のおとめで天紫珠李のハマっていることは「礼華はるの車に乗ること」で、礼華はるのハマっていることは「ドライブ」ですからね。うひゃひゃ(落ち着け) 仲良し同志な二人が劇場全体を魅了している姿に胸がいっぱい。でもやっぱりなんで恋のデリバリーもといUberEATSなのかは結局わからなかった。
このショーでは鳳月杏も色んな方と組むのが楽しい。♪Early Bird が終わると♪愛の夢 が始まる。斎藤先生って愛の夢とても好きだよね。私も。『TAKARAZUKA∞夢幻』でこの曲を歌う望海風斗と芽吹幸奈の声が今でも脳内再生されるが、ここではちょっとPOPなアレンジに。花妃舞音と鳳月杏がランデブーするのはかつての愛希れいかと霧矢大夢を彷彿とさせるわけだが、学年差や持ち味を考えると下手したら犯罪臭がしそうなのにひたすらクリーンなのがちなつさんの素敵なところ。やっぱり鳳月杏の男役って私の理想とする男役のエッセンスが詰まっている。色気があるのに安心して委ねられる、穏やかさ、包容力、チャーミングさ。つまりとてもフェアリー。
さて始まるぞ、怒涛の水樹奈々メドレーだ。 恐竜コンセプトなのかと初見時には全く気付かなかったが、彩海せら/七城雅/雅耀の次世代スターのキラキラがまぶしくきらめく。第一声、♪ETERNAL BLAZEを歌い始める彩海せらに観客はわけもわからずぐっと心を掴まれるってわけ。本当になんでもうまくてそれしか出てこないほどに魅せられる。天紫珠李/佳城葵/瑠皇りあという並びに更にぐっときた後、天紫珠李×風間柚乃の場面である。えなにこれ、めちゃくちゃときめく。研3まで男役をしていた天紫珠李と風間柚乃から「新公を一緒に創り上げた幼馴染感」が突如放出され、個人的大注目場面である。というかデビルフリーザさまってずっとCOOLな面差しなのに、なんでここで突然ニヤッてするの。きゅんです。プリンセスもプリンセスで嫌がるのに割ときゃはきゃはしていてかわいいの。どっちやねん。
そして♪純潔パラドックスを歌うトップスター降臨。♪魂のルフランを歌った霧矢大夢再来かと思ったけれど、"齋藤先生の趣味が全開"とまさかのご本人の感想を読める世の中になっている令和。凄いことです。お腹いっぱい、ここで中詰は終わりかな・・・と思ったら、おっとおっと♪DISCOTHEQUEが始まった。血濡れの呂布が2時間後にはこんなカワイイ世界にいるなんて、宝塚isワンダーランド! 初見時、耳馴染みが非常に良くて聞き入ってしまっていたのだが、流石の一乃凛選手が歌いこなしていて大・納・得。ここは彼女ですね。続くデュエットは♪Crystal Letterは桃歌雪選手。ママ(※芝居を引きずる)の優しい歌声に包まれて踊る二人に色んな感情が溢れる。この桃歌&一乃をニコイチ的にこの後も配置してくださるところが先生わかってる~~!となった一例。しかし月組娘役の布陣は歌姫揃いで凄いことに。でっかいのやらないと勿体ないよね(オブラートに包む)。
デュエットが終わると男役場面として礼華はる筆頭にオラオラする♪Angel Blossom。礼華はるって男役を引き連れがちなんだが、私としてはそろそろ娘役に囲まれる姿を見たいとなっている。とここまで書いて、私は一体彼女に何を夢見ているんだろうかと端と気づく。おそらくすごく期待しているんだと思う!
マッチ売りの少女場面もといデビルフリーザの過去的な場面と理解した風間柚乃&白河りりは次回別箱が楽しみな並び。彼が突然ピュア感満載で踊るからびっくりしちゃった。でも風間さんのピュアな感じって素敵だよね。悲しみにくれたデビルフリーザが次出てくるときに火の星の野獣になっているのもびっくりよ。
火の星。ここでも明日海りおがバッファローしている姿が思い出されちゃったよ。(参照『Misty Station』)と思ったら姐さんが"踊り出しそうになった曲がありましたけど"とこれまた感想を書かれていてにこにこ(詳しくは蒼乃夕妃様instagramをご覧ください)。天紫珠李のキハ@『太王四神記』を観た気になれる衣装はめちゃくちゃ似合っていて、これまた美味しい。プルキル@『太王四神記』みたいな彩海せらの歌唱がまた素晴らしくてだな。こういう場面ってだいたい別の歌手が歌うのに王が自ら歌っていることにまず感動。しかし、JURI×AMIも観られるなんて。ここであみ王に召喚された風間さんが勝ったはずなのに、あっさり組長大プリンセス(再来)に倒されているの何。でも妙に納得感がある。ちなみに私は6つのクリスタルの行く末とかは全く気にせず楽しんでいるクチなので、ストーリーとしてはきっと平和になったのだろうぐらいの理解度である。有識者、よかったら解説よろしくお願いします…。
さて、一生懸命頭を納得させていたところに♪コングラッチュレーション!! となるの安直すぎて面白い。退団者おめでとう場面、黄色の衣装がまぶしいよ二人とも。心からおめでとう、かけがえのない103期。
余談をはさむと、原曲であるミッチーこと及川光博氏はあえてキャパの大きい会場でコンサートをして、来たいファンが全員来れるようにしているとこのこと。その意図を汲んだファンは空席を作らないように頑張って埋めるというとてつもない関係性を作り上げていると先日家族から教えてもらった。さすがである。色んなファンダムがあるのだからこそ、自分で色々見て、罪を犯すことなく倫理観を持ちつつ、財布の限度をちゃんと把握しながら(ここ大事)、時に失敗もして、何事も経験すればいいと思う。気持ちと行動と時間が何より大事だと感じる一ファンより。
閑話休題。齋藤ショーはフィナーレがオーソドックスに立ち返るところがとても好き。今回も月にちなんだ楽曲で続く音楽で素敵だった。ベリーニの♪Vaga luna, che inargenti(優雅な月)~ショパンの♪ノクターン(夜想曲第2番変ホ長調Op.9-2)~Superflyの♪輝く月のようにをデュエットダンスで踊り締めくくられる。黒燕尾の団体芸に酔いしれ、トップ娘役が娘役を引き連れ、男役に囲まれ、最後はピンクが目にも心にも鮮やかに刻まれる二人だけの舞で終わる。無駄のない流れに感動し、退団が発表された二人を見つめればいつの間にか頬に涙が伝っていた。「人と人のあわいに幸せが宿る」を体現するのが、宝塚歌劇のデュエットダンスである。
今作は1回だけだとちょっとよくわからん! だけれども、水樹奈々メドレーだけでいろんな意味で終わらせないところが癖になる。堪能し尽くすには何度も観ることが前提かもしれないが、終わりがオーソドックスなので一度観ただけだとしてももしかしたら宝塚っぽいと錯覚できる可能性もある。とんでもないな。
ポスターの話に戻ると、氷に浮かび上がる姿は舞台の上で輝くタカラジェンヌということなのか、などと二階席から見下ろして思った。有限の舞台の上のタカラジェンヌはひとえに美しく儚いからだ。氷が溶けるように限られた時間、限られた世界。私はいつまでもここを信じていたい人間なんだなと改めて思わされた。
温度差で風邪ひく二本立ては鳳月天紫体制の月組の充実度が存分にうかがえた。どうしたって寂寞の思いに駆られるけれど、それならば、二度と帰らない時間の煌めきをずっと心に留めたいと思う。




