今公演の演目発表後、大劇場公演を経て、月城さんと海乃さんの退団発表があった(はず)。
その上で、発表された公演ポスター画像に、素晴らしい時間になるんだろうなぁと胸が高鳴った。
そう、色々ある世の中だけれども。
思い通りになんて進んでいかないし、案の定期待してはガッカリしてを少なからず(私は)繰り返し、しかしながら宝塚の公演を楽しみにしてしまう私も確かに存在する。
今を楽しむ。大事な選択だ。でもそれでよいのか。
とっちらかって、もやもやしている。
絶対にあってはならないことが起きたというのに、消費している。
でも消費してまわらなくなったら。消費のあり方が変わるには物凄く時間がかかるとしたら。
そうこうしているうちに、七夕はおろか、一年なんてきっとあっという間だ。
こちらに何ができるだろう。
心の内など他人には見えないけれど、それぞれで忙しない方も多いのではないだろうか。
のっけから話が逸れたが、果たしてありがたいことに観劇が叶った。
劇場で過ごした時間は、まさにタイトル通りだった。史上最高。常に最高を更新する精神に相応しい言葉。
しかし、その素晴らしさに触れたことで、それ以上に観終わった後は無性に寂しさに襲われた。それでも、なんてあったかい場所だったんだろうと振返る。
幸せの余韻を味わうかのように、書く。
斬新さ、それ以上の質の良さ
今回、各所で斬新なコンサートと評されているようだが、もはや何がコンサートの定石で、何が突拍子もないことなのか、私には分からない。
ただ、しみじみと楽しかった。
でも、諸手を挙げて最高!とは言えなかった表現が残念ながらあった。この点は、本当にこれから変わってほしいと思った。
それでも、ほんとうにファンとして幸せだった。
ディナーショーでもなく、コンサート形式で、たくさんの人々に囲まれて、皆の見せ場が散りばめられた、プレサヨナラショーというご褒美。
さて、このコンサートで一番良かったと思ったところ。おそれずに言うと、娘役が男役の引き立て役でなかった点だった。
同時に、上記を実現することって、そんなに難しいことなのかとも声高に言いたくなった。だからこそ今回の公演は、ある意味多面的な実験だったともいえるし、その意味で斬新なのかもしれない。
結論、外からの視点が入ることの大きな意味が複合的に立ち現れた気がしている。
娘役の壁を作っているのは誰なのか
せっかくの素晴らしい役割があったとしても、自分達でその魅力を半減させてしまうことが、きっとある。
奇しくも外の風を吹き込むことになった今公演の実験的試みは、それがマクロであれミクロであれ、どの視点でおいても非常に重要なはずだ。
これは、ただ演出だけが頑張ってもうまくいかないだろう。
観劇により直にその成果を目にして思うのは、演じる組子の力や関係性が充実しているのだということ。
そして観客は、感じ方は自由だけれど、決して押し付けてもいけないのだということも。
私達が目の当たりにし、対峙する相手は生き物なのだということを覚えていたい。
心地よいサウンド
今回の舞台の音楽には、歌謡曲を使う良さが感じられた。(どっかのショーの批判にも聞こえて? お任せする)同時に宝塚の音楽も奏でる意味があると思った。
それは何より音が(映像であっても)やや違った響きであったことによる。
そう思ったきっかけは、初日映像を耳だけで聞きながら(映像を聞くなんて、おかしな話だが事実なのだ)作業をしていた時。いわゆる普段の劇場でなじみある音とは違う? そう感じて思わず聞き入ったのだった。
なるほど、これが洒落感ある世界というのかもしれない。
洒落とか粋とか、あまりピンとこない私においても、そんな感覚を抱いたのが自分でも面白いことになった。耳が良い方の感想をぜひお伺いしたい。
さて、さまざまなシーンを振り返ってみる。
掴みはOK 始まったらノンストップ
開演アナウンスから凝っていた。耳をそばだてて聞いていた素振りを見せた客席のとある方がとても可愛かった。カメラが本当に入っていると思うと、客席までドキドキする。
今回のコンサートで入るだろうと想定された過去作品の総まとめが突如始まったが、どんどん乗せられていく感覚にまず驚いた。
なんだかんだファン以外は置いてけぼりになりがちなところ、みんなを巻き込んで楽しませてくれる仕掛けになっていたように思う。
思い出深い歌や人がたくさん現れる中で、特に印象に残ったものを記すと、まず私の中で予想外だった「るろうに剣心」。
曲自体は舞浜でもあったし、れいこさんご本人のターニングポイントなんだろうしと想定していたが、
まさかまさかの剣心が登場するなんて。
正直私はそちらに心が奪われてしまったし、すでに恋に落ちちゃってるんだと思う。どうしてくれよう……。
なんなら剣心の影なひとこちゃんも見えていた気がするし。ありゃ、頭も目も心も結構キテそう。
早霧さん、お元気だといいなあ。
大好きな「ピガール狂騒曲」のおじさん(シャルルね)も外せない。(ジャックとジャンヌもいたのもね~~最高だ)また会えて嬉しかった。
ここで作品の歌詞そのままに歌うのではなく、むしろ歌詞で進行させていく作りだったのが、今回もたつかないテクニックであり、面白さだったのかもしれない。
そして最も痺れたのは、曲紹介の後、キッチュに入る瞬間。
目の奥がルキーニになった、眼差しの変化をずっと憶えていたいと思った。ゾクゾク。
れいこさんの男役の声で聞きたい歌が聞けたなぁと思ったのが、「シークレットハンター」と(後段になるが)愛はるかに。
「シークレットハンター」はうみちゃんが好きとお話されていたような淡い記憶があり(記憶違いだったらすません)、そんな要望が反映されていたらと思うとドキドキしてしまう。(➡配信を見てうみちゃんの好みは間違いではなさそうだった! 嬉し)
個人的にも、eres mi amorは大きな挫折に直面した時に耳にして、沢山泣かせてもらった曲なので、嬉しい選曲だった。(➡ので、うみちゃんと語り明かせる夜もある……わけないけど)
救ってくれる曲に出会うため。私にとって、観る理由の一つだ。
持ち味の良さを生かすテーマ
白の衝撃/死の舞踏は、うみちゃんの気品と舞踊力が際立っていて、これだよ〜〜と唸った。
後にでてくるグルーシンスカヤがジゼルを踊ったんでしょう。違う?
そんなシナリオを勝手に感じながら観たのも面白かった。
アコースティックな場面は、この今の月組男役三人の布陣の魅力をこれでもかと詰め込んだ、これまたドンピシャな印象。
スピッツ、しかも空も飛べるはずという選曲にバンザイ。
白線流しの再放送を見ながら部活時間を過ごしていた世代には刺さってしまう。ちなみにチェリーは明日海さんの曲認定である。(※個人の見解)
リメンバー・ミー、Your Song含めて、いずれもお別れを意識させられてしまった。
月城さんと一緒に過ごされてきたお二人の姿をこれからも思い出す曲たちになるんだろうなと、そんなことも思いながら酔いしれた。
フィナーレへ向かっていく中で続くクラシカルな曲目には統一感があり、余韻に溢れる舞台。
心静かに堪能出来る歌と踊り。愛はるかに、Cheek to cheek。しみじみ良かった。
派手ではないかもしれない。しかし迫力、凄みがある。まさに集大成、史上最高に魅せられたという感想に尽きる。
ちなみにsingsingsingはBig Band Beatそのもので、緩急もばっちりであったな。
総じて、月城さん鳳月さん風間さん三人の男役の力量と、海乃さん筆頭の娘役の力量。
全てがうまく噛み合った、一言で言えば、極上の舞台だったのだと思う。
また、意外なところでいうと、下級生の方々含めた芝居心溢れるコントには沢山笑わせてもらった。
頼もしい限りだし、決して白けた空気にならないのが、月組らしさなのだなと感動した。
また割と長らく見つめてきたファンだからこそ楽しめる宝塚的シーンというのも沢山あって、
・Apassionado!(散々言及されているが、主演娘役不在ショーを娘役だけで構成する強さ)
・ファンシーダンス (風間さん嬉しいだろうなあ)(感想)
・銀の龍の背に乗って(月組のトップスターの持ち歌説)
など。思い出せればどんどん増えそうだ。
ちなみにボレロは以前、星組のショー「Borelo」のボレロより断然今回の方が曲に負けていないな! と感じたのだけれど、流石にファンの欲目かもしれないので、黙りはせずに書くだけ書いておく。(うわ)
残るみんなの宿題
先にチラリと言及したが、いくら組子が素晴らしいパフォーマンスだったとしても、演出や構成で白けた空気にさせることはある。
今回の件も、これはダメなんだということに早く気付いてほしいし、変えてほしい。
言葉にするぞ。
カタコト外国人で何が言いたかったのか。全然わからん。
少なくとも良い気持ちはしない。いっそ宇宙人にしてくれたら良かったのに(BADDYの上田先生を思い出している)(彼女がすべてなわけでも勿論無い)
正直この役は、気品とユーモアに溢れるれいこさんなのに、とかわいそうって思って観たし、特に若い人や子どもに見せたくない、恥ずかしいという気持ち。
こういう直感的なものこそ大事だと思うんだけど、どうやって伝えよう。
ベンヴォーリオ〜!(ドラえもんみたいに言うな)
たとえツキシロ先生の授業は終わってしまっても、残された宿題にちゃんと取り組まないと。
また、風間さんの持ち味頼みであのイジられ方(愛され方)は成り立ってるなとしみじみ思っているので、間違った方向に進まないことをこっそりと願う。
とはいえ、MCや学校はファンにとってはたまらないお祭り時間であった。
史上最高の果てに
何度でもいうが、娘役の魅力が最大限感じられる作りで本当に感動した。
(別箱公演で娘役のトライアングルが作れるって。凄くて強い。話は逸れるが、あまむらさきに対してのあましだよ!!!の台詞大好き。おかわりください)
おはねちゃんが次回の月組公演に出てくださるのかそうでないのか。今回も美声と笑顔を振りまいてくださって、祈るような気持ちで観てしまった。
そして、月組の男役トライアングルの確固たる存在感。
風間さんは逸材でしかないなぁと平伏しながら見つめている。スタァ。
鳳月さんは御本人がどこを見つめてらっしゃるのかいつまで経っても分からない。底なし沼のようなお方。その達観された姿勢、もはやレジェンドであって、俊藤ちゃんそのものだ。もはや宛書きだったのか。しかも今回またもやれいこさんのお相手まで!どっひゃ〜。
お願いだから、唯一無二な皆々様が健やかでいられますよう。
➡配信を見たので追記
月城さんがこんなにご卒業を意識して臨まれているなんて、と胸がひゅっとなったご発言の数々。
今のところ(そして最後までかもしれないが)共犯者はうみちゃんしかいないので、その連帯感も非常に伝わってきた。
尊いな。
今を残そうという気概に、乾杯。
余談 自分日記と亡霊の言葉
この後はもう読むのをやめてよいと思います。僕の叫びを聞いてくれ案件なので、悪しからず。
新幹線や飛行機に乗って観劇の旅に出るのは、本当に久々のことであった。でも色んな無理をしてでも今回は劇場で観たかった。であればとねじ込んで確保した日程。(➡案の定配信だと集中力が全然違ってね……)
改めて見ると、星組が休演日の日なのでちょっと期待しなくもなかった。
とはいえ、当たっても参加賞のみのくじ引きみたいなものだからさ、と気楽に構えていたのに、まさか目の前に現れると思わなかった。
白状すると、開演前にうっかり鉢合わせした。多分ご迷惑にはなっていないはず。
しかし、こういうのはほんと勘弁してほしい。お忙しいのにありがとうございます。思い出しただけで食欲が増す。(?)
Bonjour Amour!
嗚呼ラファエラ(本役)が聞いているだなんて!それを同じ空間で見つめているなんて。研ぎ澄まされたうみちゃんの舞の中で、私のマスクは濡れていた。
月組子のメッセージ性が強すぎてもはや気になりすぎる愛ある黒板に笑みが溢れ、慣れ親しんだ懐かしい音楽の数々を聞くだけで当時へタイムスリップ。
Dream ChaserそしてFULL SWINGは勿論、Cheek to cheek、My and My Girl(!)など。聞くだけで、思い出される楽しかった記憶。
そんなの、当たり前なんだよね。れいこさんの軌跡、雪組と月組の歴史に触れたのだから。
と同時に、正直、れいこさんに対して劇場でもっと・ちゃんと観たかったなどの悔しい気持ちも残るぐらいなのだから、”運命”に対して何を言ったとしても仕方がないことなのだ。
過去には行けない。
だからこそせめて、記憶や思い出は軌跡の証。大事にしたい。
宝物になる記憶を作りに、劇場に行く。そのことに、自分の判断をちゃんと介入させたいと改めて思った次第。(金も時間もかけるしな)
そして、一番の叫び。
同じ空間でれいこさんと月組の軌跡を辿れたことを、我がファン人生の宝物にしたい(激重感情)
ほんと未練がましくやかましい亡霊のようだ。
この魂をサーキに連れて行ってほしいけどグラツィアしか無理と言われて、終わるだけ。まさに脚本通りだ。
でも、言いたい。神様ってイケズ!