just arrived

あじわう

恋には意外な所で落ちるもの~月城かなとさんへの道程と感謝

まっすぐなタイトルにした。
このブログを作ろうと思ったきっかけとなった、月城かなとさんの存在を思ってのエントリであるからだ。

こんなファンの道程もあるんだなと、自分自身のために書く。

▶最初のエントリ参照:「今夜、ロマンス劇場で」を劇場で見る意味 - just arrived

 

私は彼女から目が離せないんだと気付いてから、私の何度目かの(気持ちだけは)宝塚を中心に生活がまわる時間が始まった。

 

とはいえ、私にとって不思議なスターさん※なのである。
※私をよく知る友人からはれいこさんが好きと伝えるともれなく「意外」と言われた。自分でも実はそう思っているほどだ。

というのも出会って最初からビビビと来たわけでもなく、その道程はゆるやかだった。けれど、今なら断言できる。着実に仕留められてしまったのだ。

ちなみに宝塚はゆるくそれなりに観ているのに対して、彼女から目が離せないと気づくのは相当遅かったと思っているし、諸手を挙げて応援できていたかというとそうでもない(→整理のためにも後述する)。

 

前置きが長くなったが、彼女へお伝えできるならば、ただただありがとうございますという気持ち、それだけなのである。
今の月組の充実っぷりは「観れば、分かる」。本当に素晴らしい彼女の仕事っぷり。

 

何を隠そう、ムラで華の95期の口上とロケット※を観ているのである。我ながら良い仕事をしていたと褒めたい(笑)

※ちなみにムラで初舞台公演を観ている期は91期と95期、100期に限られる。れいこさんの退団公演も初舞台公演。縁だなあ。

『薔薇に降る雨』『Amour それは・・・』 | 宙組 | 宝塚大劇場 | 宝塚歌劇 | 公式HP

95期の場合、大和悠河さんファンの友人と当時つるんでいたこと、私は陽月華さん蘭寿とむさんが好きだったこともあり、主演お二人の退団公演を見守りにいく目的が半分。加えて、親友の幼馴染み(以降知人とする)が95期ということでの応援目的がもう半分。

一言で言うならば、ロケットめちゃ難易度高くない?! ということ。今思うと精鋭の集まりだったからかと非常に納得。が、ここでは私にとって月城さんはあくまで初舞台生のお一人だった。

 

月日は流れ、上記の知人が雪組に配属されたこと、加えて当時のトップスター水夏希さんに母がお熱だったこともあり、自然と雪組もよく観劇していた。続く音月さん、壮さんの時代を通じて、年次も上がっていった95期。私の中では月城永久輝、通称れいこひとこ時代が到来していた。完全なるニコイチ。いずれどちらかは組替えするだろうなぁと思って見つめていた若手スターコンビである。(好対照:朝美暁)※

※皆みんな、古巣から飛び立つことないじゃない…

 

私にとって、壮さんとれいこさん、早霧さんとひとこちゃんにそれぞれ師匠と弟子の関係性ならびに持ち味の共通項を見出していた気がする。

ひとこちゃんはあまりに早霧さんラブの矢印を示していた気がして(笑)、当時はれいこさんは綺麗だけどイマイチ掴みどころがない印象で、何なら怖いと思っていた。壮さんは竹を割ったようなお人柄で、人となりを開示してくださっていたことも相まって、とにかく怖かった。何を考えているのか、ともすれば切れ味の鋭いナイフのような。今思うと、観察眼の鋭さだったのかもしれないが、見えない殻もあったのかもしれない。そのため、雪組のひとこちゃんが、とても明るく華やかな印象で私の脳裏に焼き付いているのは、隣のれいこさんの存在によると思う。

加えて、特に主演した新人公演の役の印象もあるだろう。ひとこちゃんはルパンや剣心、対するれいこさんは地味なサラリーマンと日本物(とあえて書く)。裏を返せばれいこさんはまさに芝居力の象徴な訳なのだが、ライトなファンの印象だとこんなものだ※。

※今の舞台はどうか。完全に「われここにあり」の舞台である。真ん中でこんなに求心力があり、裏切らない舞台に出会わせてくれる。そんなスターになられるとは。これはひとえにご本人の努力の賜物であろう。他のファンの方も言及されていたように、派手な役付きで上り詰めたとは言い難い道程を、確実なものに変えていかれたその力に、本当に平伏す思い。

※昔むかし小池先生に、君は派手な方ではないからがんばれ(大意)と言われた話があったと記憶する。血の滲むような努力が容易に想像できるところが本当にプロを感じる……怖いというよりおそろしい。

 

そんな私が勝手に抱いていた漠然とした(今思うとネガティブ)イメージを払拭することになったのが、日本物の一つ、星逢一夜。の、新人公演※。お芝居もさることながら、心動かされたのはご挨拶だった。

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※shall we〜も前田慶次も、新人公演は劇場で観られなかったので割愛

今まで、(あんなに美しいのに!)意外に地味で、ちょっと怖い印象がここで一気に和らいだ。退団する同期に触れるくだりなど※、こんな方だったのか……とびっくりしたのだった。 

※その方こそ知人なわけで、彼女のお陰で本公演は千秋楽を含めて何度も何度も観劇させていただき、本当にどこでどのようにつながるか分からないのがご縁というものである。まさかうっしーにこんなにも心惹かれることになるとは。

 

その後、因縁の正塚先生作品を最後に、組替えを迎えられる。

ようこそ月組へ、というスタンスで改めて贔屓組目線で注目することになった。

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初っ端のAll for Oneでは、階段降りがもはや大スター天海さん※のような風格じゃ……と大変ドキドキしたことと、フィナーレで御曹司ありちゃんとめちゃめちゃ楽しそうにしていることを昨日のことのように覚えている。

あれは、御本人も会見で触れられていた組替えへの思い、所謂”気概”の表われなのだろう。(前者ね。後者の楽しそうにしていたのは優しいお姉さんなれいこさんの表われかなと推察)

※宝塚時代の天海さん、なぜか黒髪ロングイメージなのである。

 

とはいえ、珠城さん時代は私生活も転機が重なり、コロナ禍もあり、その他色々あって(と濁す)、あまりちゃんと観られない時代が続き、かろうじてBADDY(カンパニーは観た記憶が?)(おい)までは観たものの、大劇場での観劇はなんとWTT/ピガールまで飛んでしまう。なんてこと!

※全て映像で遡るなどしてチェックはしたけれど、やはり気持ちは違う、、、

てなわけでファンの割に相当な空白の時間があるのだが、WTT/ピガールは友の会が色んな所で友達になりすぎてくれたことにより、結構な回数観る羽目になったという嬉しい不可抗力に見舞われた。

まさかこれが運命の分かれ道になるとは露知らず。

 

WTT/ピガール。

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ありちゃんという人がいるのに(ほんと誰だよお前)色々重なり中々観に行けなかった時期が続いていたのだが、しかし、前述の不可抗力のおかげで、すっかりファンに舞い戻ることができたのだった。

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思い出ぽろぽろ

 

本当に楽しかった。元々日本物ショーが好きというのもあったのだが(今度の大野先生のショーもとても楽しみ!!!)、ピガールも中々に良かった。ありちゃんが、こんな時代になってもダンサー役していて、これだけは別の意味で泣きそうだったが、風間さんの存在に惚れ惚れしてしまったのもこの作品。そして、何より、公演が終わってから気づいたのだ。
月城さんの演じるおじさんがべらぼうに魅力的だったということに。

 

先に断っておくとタカラジェンヌの髭にめっぽう弱いこの私。

知らず知らずプルミエールの映像を見させてもらったり、カフェブレイクを見たり、歌劇にGRAPH、刊行物をちゃんと読むようになっていった。

生活の中でじりじりと、行動における宝塚割合が増えていったことで、あぁ、私、この人のこと好きなんだなぁってゆるやかに気付かせてもらった。

 

それにしてもシャルルおじさんのどんなところが魅力的だったかって? うーん、変なおじさんなんだよね。ロングトーンも面白かったし凄いなとは思ったけれど、一番は、包容力。

珠城さんを物理的にのみならず大きく柔らかく包みこんでいた、あの男役の纏う力に今思えばガツンとやられていたのだろう。なんならヒロインが珠城さんでもあったので、実質主演男役だったからなのかもしれない。真ん中がこれほどまでに似合うとは。(2回目)

嗚呼、また髭役を観たかった。ねえ、どこかでバトラーやらないか?(ここでも言う)

それぐらい、男役のお芝居としてまだまだ観たい役が沢山あるのだ。ファンとはつくづく欲深い生き物だ。

 

そして、桜蘭記/DreamChaser。

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二番手最後の舞台は、上田先生が月城さんに明るく感情豊かな人間的な役を宛て書いた。このことは、とても印象的だった。BADDYのポッキー巡査も、最後に二面性は見せることも含めて、非常に人間的だ。なので、先生の中での月城さん像なのだろう。血が通っている印象。私が抱いていた下級生の月城さん像とは真逆。役者・月城かなとの持ち味なのかもしれないなと、そんなことを思いながら観ていた。

周りを見て、心を動かし、生き抜く。舞台で躍動し生きることは、空気を動かし、司ること。それが出来る人なんだなとしみじみ観た。作品の中でも、最後まで生き抜く、どこまでも救いであり、進む存在だった。

 

そして満を持してのトップスター就任。その後は書きたい作品について個別書いているので、ここでは割愛する。

振り返ると、博多座の番宣の映像が出た時は何度も繰り返し見た。素敵だな、始まるんだ、わくわく。そんな気持ちでふわふわした時間を過ごさせてもらった。そんな綿菓子みたいな甘い思い出は、この先何回もないと思う。ありがたい。

 

退団会見が開かれた。トップスターだけの特権。ありがたく情報をさらった。
5作と決めていたことやギャツビーの時と明言されたこと、質問への対応力、気持ちの持ちよう、仕事への向き合い方。どれもこれも、私が見つめてきた”れいこさん”なのだなぁと、こんなときにまで、いやこんな場面だからこそ感動した。

(一つツッコミたいのが、相手役へ退団の意志を伝えるタイミングと対する回答のスパン。個人的には凄いことになっていたなと思ったのだけれど、イチ人間として相応の振る舞いをしただけだと思ってるかもしれないな、などと妄想の余地があっておもろいエピソードであった)

 

ちなみに、ギャツビーの東京千秋楽は配信で観ていたのだが※、あまりに満足気な言葉を吐くので、これはいつか来る退団発表の時に思い出すぞと思っていた。まさかドンピシャだったとは驚いた反面、納得度は高かった。私も意外としっかりファンしていたんだな、などと自己満に浸る。

※参考:

nonbach.hatenablog.com

 

この人の紡ぐ言葉に心底惚れてしまっているので、ご挨拶は毎回ワクワクしたし、時に雑誌などのインタビューの言葉を、仕事で悩む時などに手元で書き留めたこともあった。記事で紹介されていた、ありちゃんや風間さんの支えになる言葉を送っていることにも納得であり、改めて本当に「よく見ている」人だなと、その洞察力と言語能力に感嘆する。

また、自分と相容れない対象に対して、高度なコミュニケーション能力を以てしかし辛辣に対応される、人として揺るがない軸・信念が会見でも表れているようで、好きだった。(全部好きじゃんね)(そうだよ)

 

正直にいうと、この人の紡ぐ宝塚での物語という大きな嘘に、本当はもう少し騙されていたい。そんな気持ちで今はいる。

 

大劇場5作。
数の大小ではなく、月組トップスターの役割としての道程に一分の隙もない。

まだ見ぬ宝塚最後の舞台もきっと、いつも通り仕事を全うされ、男役・月城かなとの壮大なパズルのピースは埋まるのだろう。それが大いに予見されることから、何かが”足りない”というのも断じて違うと確信している。
しかし、彼女の舞台が、お芝居が好きで、私は今、彼女の「男役」の芝居が好きなのだ。(それ以外は観たことないのだ。観れなくなるということと、不可逆的なのが辛い)

恋に落ちた、その包容力。※

※かっこいいと浸るような、これまた一つピュアな気持ちはこれっぽっちも(私は)湧かないのがまた不思議。


特にトップスターのお芝居は、相手役によって変わる。
佇まいも男役像も何もかも。だからこそ、完璧なトップコンビを演じてくださった一方で、完璧じゃない面をどうして見せてくれなかったんだろう、と悔しい気持ちがどうしたって滲まざるを得ない。

私の愛する彼女の(彼の)包容力は、ご本人も望んだかどうかは知らないが、“見慣れた”盤石な体制によってのみ発露され、まだ見ぬ、不安の入り交じる、特有の緊張感ある関係性の上には結局成り立たなかったことへの切なさをどうにか綴りたかった。

 

月組に異動してから、結局海乃さんとしか組まなかったれいこさん。相当な頑固者だと思ってしまう。結局、れいこさんがうみちゃんに添い遂げたんだとしか言えない。言えないのだけれど、もう一人の私から言いたい。

自分が想定しない”顔”というものをこちとら見せてほしかったのだよ!!
(でも、どうやったら見られたのか、考えても考えてもその道が見えてこない、そんな答えを会見にて示されてしまった。お相手は何枚も上手(うわて)だという確たる証拠だ)

 

閑話休題

会見の言葉は、どれも残しておきたくてスクショだらけなのだが、その中でも「組替え」に対する考えは、非常に現実的かつシンプルで好きだった。

ゆるーい月組ファンとして生きている私に刺さる存在になられる由縁に触れられたし、何より組替えしていった方々へのエールでしかないというところ。ひとこちゃんもありちゃんも、残された頼れるスターさんであるのでね※。(勿論、月組の皆さんは大前提だが)

※トップスターロングインタビューでも、組替えするありちゃんに触れてたなぁなどと思い出す。本当にこの方は。また、組替えという節目をどう捉えるか、和希そらさんを思うと胸が抉られるような気持ちにさえなる。タカラジェンヌお一人ひとりの選ばれる道そのものを応援していきたい。

 

 

なんだか一部悪口になっていたかもしれないが(不快に思われたら申し訳ない)、結局は惚れた私の完敗だ。

こんなに客観的に物事を俯瞰して捉え、観察眼を持って人の感情の起伏を演じる表現力がある方はいないと思っていたし、改めて視座の高さが会見で発露されたように思える。役割意識もさることながら、もっと長い時間軸の話の目線。
そこまで自然に、それでいて計算しつくしていたら、正直突っ込みどころはない。なので、ただただ気の赴くまま、整理をした次第である。

 

 

ご本人も認める変なおじさんきっかけで、その魅力に気付くまでの道程は短くなかった。

もっと見つめることができていたら、もっと楽しかったのかもしれない? 

でも、やはり、気付いた時がスタートでしかないと改めて分かった。そして、私にとって月城かなとさんは、確実にここ数年の私の心をめいっぱい元気にしてくれた、ビタミンみたいな人なのだということも、ここまで書いてきてやっと咀嚼できた気がする。

私の世界が、彩りに満ちた。宝塚歌劇が、私にとってのロマンス劇場になる、そんなきっかけを再び与えてくれた人。

 

ご卒業の発表、そして丹精込めて作りあげられた舞台を、ありがとうございました。

自らの言葉で丁寧に紡いでくださったメッセージをしばらく噛み締めつつ、精一杯の感謝の気持ちを込めて。

最後の日まで、どうか健康に邁進できるように祈る。願わくば、天の川を渡る織姫と彦星の姿を探すように、そのお姿を垣間見させたまへ。

(できたら一回じゃ足りないので、何回かがいいな)(運を貯めるぞ!)

 

※追記

会見をニュースで拝見した。

あんなに清々しく、もはや楽しそうに(!)お話されているとは思いもしなかった。にこにこじゃんね。(比較するわけではないが前任の珠城さんの涙姿とのえらい違い)

改めて、この時間さえも「月城劇場」なのだなと感じた。にやりとほくそ笑むような、そんなミステリアスさが滲んでいて、言葉はアレだが、安心してしまった。

 

タカラジェンヌさんには幸せでいてほしい。